十二 川俣谷探訪|伊勢茶の里の見どころガイド|川俣谷のお茶|108teaworks

十二 川俣谷探訪

〜川俣谷を一度訪ねてみよう〜見どころ一杯〜

松阪から国道166号(和歌山街道)を車で20分程、大石不動を経て飯南町に入り櫛田川の流れを遡って、白猪山の麓に広がる松阪牛の肥育や深野和紙で知られる飯南町深野、横野地区(旧柿野村)を通過し、仁柿川に架かる小さな橋を渡ると粥見地区に入る。直ぐの信号を右折すると仁柿峠を経て津市美杉町奥津を通って奈良、京都に通ずる。この道は古くは伊勢本街道で往来多く、沿道の村々は銘茶産地として知られていた。今では茶園は僅かしか見られない。

さて、車は国道166号を直進し、山沿いのカーブの多い道を上り詰めたところに道の駅「茶倉駅」がある。江戸時代、丹生村の地士西村彦左衛門の尽力で出来たという立梅用水の頭首工(ダム)を眼下にみると、頭首工の傍にリバーサイド茶倉の施設がある。宿泊施設や茶業伝承館がありキャンプも楽しむこともできる。

頭首工を左下に見ながらしばらく進むと急に視野が開け、一面、緑の良く管理された茶園の広がりに出合う。ここが粥見茶業の本場である。江戸後期に永田善次郎なる人物が宇治製茶法を伝えたと云う川俣谷で一番大きい茶産地でもある。沿道には伊勢茶の大きな看板が建ち、お茶の販売と喫茶の店(茶来・深緑茶房)が目に付く、ここで一服、深蒸し茶(松阪茶)を味わうのも良い。

さらに櫛田川を遡ること10分、右に局ヶ岳の秀峰が現れ、左に道の駅「飯高駅」がある。道の駅は地元産物の直売所、レストランのほか、温泉「飯高の湯」が併設され、いつも賑わっている。帰りに温泉で疲れを癒そう。ちょっと直売所を覗いてみると地元産のお茶がところ狭ましと並び、さすがにお茶の産地を伺わせる。

宮前は江戸時代には和歌山街道宿場町として栄え、堀内広域など多くの茶商(荷主)が活躍した場所でもあり、戦後の三重県茶業復興に尽力した野呂恭一の故郷でもある。また、映画監督小津安二郎が生涯一度だけ教師として教鞭をとった宮前小学校があり、飯高振興局前の信号の手前右に飯高町老人福祉センターの建物が見えるが、ここに野呂恭一の胸像が建ち、建物内に小津安二郎の資料館がある。

飯高「道の駅」を出て国道は川沿いに大きくカーブし、正面に栗木岳の険しい姿が現れ、道の両側に茶園の広がりがある。飯高町の茶の中心地赤桶地区で道沿いにお茶処「茶工房かはだ」の店がある。ここも覗いてみよう。お茶処を出て直ぐ、大楠で知られる水屋神社。樹齢千年に及ぶ大楠は天然記念物でもある。この宮前・赤桶地区は、珍布峠や礫石などの神話伝説、北畠具教卿の首塚、荒滝不動のつつじなど見どころが多くハイキングコースとなっている。

赤桶を出てしばらく行くと三峰山の懐に抱かれた集落が点在する川俣地区に入る。この川俣は鎌倉初期に京都高山寺の明恵上人が茶を伝え、また、紀州藩の茶処(番所)として栄えた江戸時代の川俣谷茶業の中心地であった。現在では茶園は僅かしか見られず、茶業の中心は下流の赤桶・宮前や粥見地区に移っているが、川俣地区の山中には当時を偲ばせる自生茶樹が多く見られ、江戸時代には山の中腹まで茶山が広がっていた名残りを留めている。

川俣地域に入り粟野橋を渡ったところの正面に旧川俣小学校の校舎が見える。この校舎の2階に大谷嘉兵衛翁資料館があり、翁の遺品、資料等が展示されている。ここから10分ほど行くと右側に三峰山登山道の看板をみる。この登山道への道を入ると、あまり知られていないが、三峰山中腹に栃の大樹がある。江戸時代飢餓に備え植えられたと聞くが、今でも大きな実をつけ、地元の人たちが栃餅に使用しているとのことである。

また、ここから10分程で萌黄色の大谷橋を左に見て、最近、架橋された国道166バイパス「ひらせ大橋」を渡ったところが大谷嘉兵衛の生誕地宮本(江戸時代は谷野村)で、ここには大谷家の菩提寺長楽寺があり、平成13年に建立された茶聖・大谷嘉兵衛翁の生誕の碑(胸像)が建つ。長楽寺を出てすぐ左折し旧飯高町西中学校前から山中に延びる林道を車で15分程登ると、標高700メートルほどのところにお熊ヶ池がある。この池は中世北畠家が支配する谷野城にまつわる悲話が伝えられるが、嘉兵衛はこの池をこよなく愛し、生家の南の方向に位置することから自分の雅号を「南湖」としたと云われている。

さて、長楽寺を後に中瀬橋を渡ると再び国道166号に交叉し、直ぐ左手に森地区(旧森村)に通ずる分岐に出合う。真っ直ぐ進むと波瀬集落を経て高見トンネルを抜け奈良県吉野村に通ずるが、途中にもみじの名勝泰運寺や波瀬植物園、陶芸の森「虹の泉」、交流施設グリーンライフ「山林舎」があり、国道から離れ旧道(和歌山街道)入ると、波瀬本陣跡を始め、当時の街道の賑わいを偲ばせる。また、三峰山麓の月出集落から5キロほど林道を進むと国内最大級の中央構造線露頭(天然記念物)が見られる。

国道を直進せず左に曲がり新高橋を渡り森集落を蓮川に沿った道を辿ると蓮ダム湖に行き着く。この地域も今は殆ど茶園は見られないが、江戸時代の川俣谷茶産地の中心であった。なお、森地区は大谷嘉兵衛が横浜に出るときに頼った小倉藤兵衛の出身地でもあり、香肌峡温泉「スメール」がある。温泉でひと浴び、迫りくる山塊の趣を楽しむのも良い。

波瀬・森地域は櫛田川源流、北部台高山脈の懐深く、高見山、国見山、明神岳、迷岳、池小屋山など1,200〜1,400メートル級の山々が連なり、風光明媚な山峡で登山のメッカでもある。

なお、川俣谷には伊勢国司北畠家の古城跡が点在し、古城めぐりも面白い。美味しい伊勢茶(松阪茶)を飲んで、川俣谷の遺跡と景観を訪ねるのも良い。一度、川俣谷探訪をお勧めしたい。


写真・図版

茶販売と煎茶喫茶「深緑茶房」(飯南町粥見) 茶販売と煎茶喫茶「深緑茶房」(飯南町粥見)

茶販売と煎茶喫茶「茶来」(飯南町粥見) 茶販売と煎茶喫茶「茶来」(飯南町粥見)

道の駅「茶倉駅」とリバーサイド茶倉(飯南町粥見) 道の駅「茶倉駅」とリバーサイド茶倉(飯南町粥見)

茶販売と煎茶喫茶「茶工房かはだ」(飯高町作滝) 茶販売と煎茶喫茶「茶工房かはだ」(飯高町作滝)

野呂恭一の胸像(飯高町宮前) 野呂恭一の胸像(飯高町宮前)

映画監督小津安二郎資料館(飯高町宮前) 映画監督小津安二郎資料館(飯高町宮前)

道の駅「飯高駅」と特産品直売所(飯高町宮前) 道の駅「飯高駅」と特産品直売所(飯高町宮前)

旧川俣小学校と大谷嘉兵衛翁資料館(飯高町粟野) 旧川俣小学校と大谷嘉兵衛翁資料館(飯高町粟野)

水屋神社の大楠・樹齢千年の天然記念物(飯高町赤桶) 水屋神社の大楠・樹齢千年の天然記念物(飯高町赤桶)

嘉兵衛翁が愛したお熊ヶ池(飯高町宮本・標高700m) 嘉兵衛翁が愛したお熊ヶ池(飯高町宮本・標高700m)

川俣谷源流域「蓮ダム湖」(飯高町森) 川俣谷源流域「蓮ダム湖」(飯高町森)

高見山の樹氷(飯高町波瀬) 高見山の樹氷(飯高町波瀬)

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